ゼロ・ウェイストへの道

[ゼロ・ウェイストとは何を指すのでしょうか] 2004年11月号

上勝町は住民の皆様のご協力により細かな分別を行い、できる限りの資源回収に努めてきました。その努力の結果、燃やさなければならないごみは減り、日比ヶ谷ごみステーションに出てくるもののうち、約80パーセントのものが新たな資源として再生を進めるリサイクル専門の会社に運ばれています。

しかし、毎日の生活でみなさんが感じておられるように、身の回りには分別することが困難で、燃やすしか、また埋め立てるしか処理のしようがないものが溢れており、皆様の努力が報われるための大きな障壁となっています。そのために多くの資源が燃やされ、また埋め立てられることで無駄に消えてしまっています。

さらには燃やしたり、埋め立てることが、環境や人の健康に悪い影響を与えるのではないかと、焼却や埋め立ての施設を抱える地域の住民が多くの労力をつぎこんで反対運動を起こしています。このように多大なエネルギー・資源・労力・時間・お金がつぎこまれても、ごみの問題が解決されないのはどうしてなのでしょう?
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大きな理由のひとつが、上の絵にあります。
現在は、使わなくなった物の処理が自治体の責任になっており、消費者が負担を持つしかけになっているため、処理するときのことを考えずに様々な物が作られているからです。

そもそもごみにならないもの、分別しやすいものが作られれば、今、ごみのために使われている資源やお金・労力などを省くことができます。「ゼロ・ウェイスト(zero waste)」とは、このような無駄・浪費をゼロにしていこうという取り組みです。

この仕組みを作るために、上勝町だけでなく同じような想いをもった自治体・市民の方々と共に取組んでいくことが必要になります。

出典 高月 鉱著 『ごみ問題とライフスタイル』 日本評論社

 

 

[分別ワンポイントアドバイス] 2004年12月号

(1)チラシにはさんでも抜け落ちてしまいそうな小さい紙…どうしよう

※例えばこんなの・・・
封筒、便箋、ハガキ、名刺、ダイレクトメールのチラシ、洋服のタグ、ステ ィックシュガーの袋…は、こうすればラクチン!
大きな紙とまとめて紙袋にいれておけばほらキレイ!
ゴミステーションには紙ひも(クラフトの紙ひもはだめ)で結んで出してくださいね
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(2)今夜のメニューは天ぷら…
使った油は、固めて「ごみ」にしてしまわずに、容器にこし入れてそのままゴミステーションに出してください。飼料の添加油脂や肥料になります。
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*必ずこしてください。 *やけどしないように十分気をつけましょう。

生ごみや汚物(おむつ等)を燃やさなければならないもの・プラスチック容器・包装の袋にいれないよう、ご協力お願いします。
圧縮するときに中身がとびでてこまります。生ごみはコンポストあるいは生ごみ処理機で堆肥に、汚物は燃やさなければならないごみとは別に出してください。

混ぜればごみ、わければ資源!
他にも「私はこうしている!」というアイデアがありましたらまちづくり推進課までご連絡ください。

 

 

[ゼロ・ウェイストセミナーが開催されました] 2005年2月号

第2回ゼロ・ウェイストセミナー

1月15日、コミュニティセンターで高田久代さん(元ゼロ・ウェイストニュージーンランド財団アシスタント)を講師としたゼロ・ウェイストセミナー第二回が開催されました。
高田さんからは、ニュージーランドでゼロ・ウェイストを進めるための取組みとして、国は法律の整備等を行い、また企業は野菜や果物の量り売りをすることでごみとなってしまう物を減らす工夫を行い、また一般家庭ではごみの分別や生ごみの堆肥化、不用品市への参加、お店への買い物袋の持参などが行われているなど、皆が協力してゼロ・ウェイストに取り組んでいる様子のお話がありました。会場からの「買い物袋もいずれごみになるのでは」という質問に対しては、「確かにそうだけれども、袋を持参することで年間に1000枚ほどのレジ袋を節約することができ、ゼロに近づけることができます。」と説明され、ゼロにならないからだめ、と諦めてしまうのではなく、できるだけゼロに近づけようと知恵を使うことが大事であると力説されました。

第3回ゼロ・ウェイストセミナー 2005年3月号

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山をもっと有効に利用できるかもしれない~木を石油に替わる燃料として暖房や発電などに利用する木質バイオマスについての講演会が1月29日福原ふれあいセンターで開催されました。  京都大学名誉教授の神崎康一氏をお迎えし、会場には約50名の参加者が集まりました。神崎氏からは、森林資源の豊富な国・オーストリアのとある村の紹介がありました。

「森はわたしたちの発電所」とするシェンケンフェルデン村では、村に建てられた地域暖房センターを中心に暖房用配湯管がはりめぐらされており、木材チップを燃料にした地域暖房のネットワークがつくられているそうです。この地域暖房センターに加入している家では、配湯管を通して送られてくるお湯で暖をとることができるのです。夏の間に木に蓄積されたたくさんの太陽の光を、冬に暖房として利用する。使われる木材は地元の木材であり、エネルギーの地産地消が行われているのです。また、この地域暖房の設備を作ることには、計画から実際の配管工事まであわせて約20の会社が関わっており、4年の歳月がかかりました。設備に加え、実際の木の切り出し作業やチップ生産の場が生まれることもあり、木材を利用してエネルギーを作り出すことが仕事を生むことにつながり、さらには山も活性化されるといった報告もありました。

また、この村では木材を燃料とする木質バイオマスに加え、太陽光や風力を利用した発電も行われており、そのような石油に頼らないエネルギーで470軒のうち45%のエネルギーがまかなわれているそうです。上勝も森林資源を始めとして、自然が豊かなところです。会場からは「木質バイオマスに取り組んでみたい」という声もあがりました。

第4回ゼロ・ウェイストセミナー 2005年4月号

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去る2月20日、連続して開催されてきたゼロ・ウェイストセミナーの最終回が開催され、会場には暖かい陽気の中約30人が集まりました。
最終回の講師は、先日上勝中学校が視察に訪れた香川県豊島から、香川県議会議員の石井亨氏をお迎えしました。石井氏は豊島に生まれ、不法投棄された産業廃棄物を撤去するための住民運動の過程から議員となった経歴をお持ちで、ご自身の経験をもとに日本でいまごみがどうなっているのか、そして私たちはそれに対しどう向き合うべきなのかについて話されました。
お話の中では、悪質な業者が廃棄物の取扱を始めようとした当初から反対を続けていたが聞き入れられなかったこと、法律の盲点をついて不法投棄が大規模化・悪化したこと、ようやく香川県が責任を認め、莫大な費用を投じて無害化処理を始めたものの、無害化技術が不安定なことから事故が発生し、処理が停止していることなど、豊島産業廃棄物不法投棄事件の経緯と現状について説明がありました。また、事故の影響は豊島だけでなく、無害化施設の従業員にも精神的な被害をもたらしているとの報告もあり、一度不法投棄されてしまったごみを適性に処理し環境を回復させる技術はなく、甚大な悪影響が広がってしまうということを力説されました。
また、このような事例は豊島事件の後も日本各地で続発しており、日本の中でごみが行き場を失っており、あちこちに溢れ出していることをあらわしていると説明されました。
適性な処理とされている埋め立て地についても、数十年後の安全性は不確定であり、子どもや孫の世代を考えれば適性であるとは言えないと強調されました。
不法投棄は誰にとっても他人事ではありません。不法投棄から地域を守るためには、そもそもごみとなるものを減らすための日頃の皆様の分別の取り組みがとても大切であり、また、自分の地域に不法に捨てられてしまわないように自分で管理を行うことが必要であることがわかりました。

 

 

[上勝町の取り組みをバークレーの公聴会で発表させていただきました]2005年5月号 松岡夏子

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3月4日から29日までアメリカ合衆国カリフォルニア州においてゼロ・ウェイスト(環境の悪化につながる無駄をなくす)の研修会「ゼロ・ウェイストフェローシップ2005」が開催され、上勝町より参加させていただきました。
この研修会はアメリカの環境保護団体「ガイア」によって開催され、プエルトリコより2名、イギリスより1名、そして上勝町から1名のゼロ・ウェイストに取り組む人々が一同に介しました。研修期間中は、現地でのゼロ・ウェイストの目標達成にむけた再資源化(リサイクル)や再使用(リユース)の取り組みを見学するとともに、それに携わる人々との交流や情報交換を行いました。
私が3週間滞在した市はカリフォルニア州の一番大きな都市であるサンフランシスコから車で30分ほどのところにあるバークレーという人口10万人の中規模都市でした。大学を中心とした学生の街であり、また様々な人種が共存している開放感あふれる所でした。
そのバークレーも上勝町と同じように2020年を目指したゼロ・ウェイスト宣言をしています。

みんなで取り組むゼロ・ウェイスト

日本の多くの町では「ごみは行政がやること」という考え方が主流ですが、バークレーでは行政の他、NPOや企業など多くの種類の団体がゼロ・ウェイストに関わっています。
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ごみをたくさん出すとたくさんお金がかかる

写真にある2つの箱のうち、大きいほうがごみ(埋立て《バークレーではほとんど焼却が行われていません》)用の箱で、この箱に入れておけば市が回収していってくれるのですが、この箱を持つためには市に毎月お金を払わなければなりません。箱には4つの異なった大きさがあり、一番大きな箱は毎月約4800円払わなければならないのに比べて、一番小さな箱では650円と、出すごみの量によって金額にも大きな差ができるよう設定されています。これによってできるだけごみになるものを減らすために、ごみになるものは買わない、あるいはいらなくなったものは出来る限りリサイクルや再使用をしようという気持ちが市民の中に生まれてきます。また、ごみを減らすことで家計も助かるというように努力した人が報われる仕組みとなっています。集められたお金はゼロ・ウェイストに取り組む団体を支援することに充てられています。

捨てる前に…

バークレー市内にはたくさんの大型スーパーほどの大きさの中古品販売店があります。日本でも中古の服や家具を売っているお店はありますが、ここではそれに加えてドアや窓、トイレ、お風呂などからドアノブ、蛇口や釘などの部品に至るまであらゆるものが揃っています。市民はごみにすればお金がいるけれど、ここへ持ち込めば無料かあるいは買い取ってくれるとあって不用品を持ってきます。従業員が販売できないと判断したものはそこで分解されリサイクル業者に引き渡されます。このように市民が「もういらない」と思ったものをふるいにかけて、再使用あるいはリサイクルできるものを取り出し、できるだけごみとなってしまう物を減らす意気込みを強く感じました。

身近なリサイクルを

その他、ガラス瓶やジュースのパックなどを使って自分たちで新しい商品を作り出している取り組みを見学しました。大きな工場にリサイクル資源として送ってしまうだけでなく、それらをもう一度「自分たちの資源」としてとらえ直すことで様々なアイデアが生まれ、生きがいや起業につながっていることがわかりました。
この度の研修で得たたくさんのアイデアを今後上勝町のゼロ・ウェイストに活かしていきたいと思います。ありがとうございました。
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