宣言から1年

昨年9月19日、上勝町は、議会において満場一致で採決し、世界に向けて2020年を目標にごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言をしました。その宣言から1年、上勝町の取り組みをシリーズにして振り返ります。

経済効果の増大~来訪者の増加 2004年10月号

宣言後の1年間、何よりも大きな変化は視察者の増加であり、昨年9月から今年9月19日までにごみの視察で上勝町を訪れた方は、98組1023人にのぼります。
これは『ごみ』が日本全体の大問題であり、すべての自治体の悩み事であることを物語っています。 来訪者のほとんどが、日比ヶ谷ゴミステーションを見学し、住民の方々の前向きな協力姿勢と施設の合理性に驚かれます。
また、テレビ・新聞等の報道機関では何度もなんども特集を組み、上勝町住民の取り組みのすばらしさを報道されました。

上勝町のイメージアップ戦略として

「上勝町のように、住民が前向きにごみを減らそう、美しい棚田や清流のような自然環境も保全していこうとしている町で生産された『彩』や『しいたけ』等の農産物は、安全でおいしいに違いない。」
「また、上勝町に行って来たけれど道沿いにはほとんどごみがなく、途中で立ち寄った商店でも、再利用の菓子箱等を利用してできるだけレジ袋を使わなくて良い工夫がされていた。」等々、多くのメールやお手紙もいただいています。
つまり、皆さんのごみ分別の日頃の努力は、町内商店の顧客を増やし、農産物の信頼性や付加価値を高め、最近全国各地で取り組みが始まっているエコツーリズム等、観光産業の大きな流れの中で地域の経済向上に結びつくコマーシャル(広告)的な意味を持ち始めています。
そして、上勝町の「売り」である「先進的な環境」をもっと農産物の販売・各商店での宣伝・観光資源として活用できれば、現在の町民の方々の苦労がすこしづつ報われるのではないかと考えています。

報われる制度づくりのために

宣言の後、上勝町は何よりもごみをゼロに近づけるために、国の法律改正を求めて県知事・環境大臣・経済産業省副大臣への陳情を行ってきました。
また、根本的にごみを製造・販売時点から減らすことで、最終的には皆様の利益にもつながるよう、同様な想いを持った自治体や組織との連携をはかることを目的として、非営利特定法人ゼロ・ウェイストアカデミーという組織づくりを現在進めています。

ごみは減ったか? 2004年11月号

昨年9月19日、上勝町は、議会において満場一致で採決し、世界に向けて2020年を目標にごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言をしました。その宣言から1年、上勝町の取り組みをシリーズにして振り返ります。今月はその第2回目、「ゴミは減ったか?」をお届けします。

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平成12年度からの焼却ごみ量の変化と人口の変化を示しています。
平成12年度は小型焼却炉の使用を始めた年、平成13年度は焼却炉の使用を止めた年です。
また、平成15年9月は上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言をした年ですが、平成13年の35品目分別を開始してから焼却ごみは一気に減っており、その後現在まで少しずつ減っているような状況です。
つまり、上勝町のごみ(リサイクルされない物)は、ごみゼロ(ゼロ・ウェイスト)宣言をするまでの間にすでに分別によってごみが減らされていて、リサイクル率をみても今後ごみを減らすことについては、町内での製造・販売・消費の構造を変えることや、日本全国に呼びかけて仲間づくりを行うことにより国の法律を改正しない限り、これ以上ごみを減らすことが難しいとも考えられます。

宣言後の1年間では、ごみが目立って減ったとは言えませんが、1日も早くめんどうな分別や町内のあちらこちらに散らばる不法投棄が行われないようにするために私たちが今しなければならないのは、現在の徹底した分別を実績として上勝町という地域の枠を超えて人々の「声」を集めることであり、「リサイクルできないごみ」はないというような生活様式へ変えていくことです。
そのような中、全国的に埋め立て地が満杯になり、あちらこちらで水質の汚染も問題になっています。

このままでは、いけないと思いませんか?

暮らしの中の心づかい -ライフスタイルの転換- 2004年12月号

うっかりお醤油やコーヒーなどをこぼしてしまうことって誰しもありますよね。そんなときみなさんはどうされますか?なによりもまずこぼした子どもをしかる、という方もおられるかもしれませんが、まずは急いで拭かなければいけません。
下のグラフにあるように、日本人は世界でもダントツにティッシュペーパーを使う国民です。机の上に広がったコーヒーの水溜りに、慌ててある限りのティッシュを使わんばかりに放り込み、水気がなくなるまで拭いてゴミ箱にポイっ、なんてことありませんか?
だけど、ごみはたまるほど、また汚れているほどやっかいになるもの。布巾を使うことで、ごみは減り、またティッシュペーパーを作るときに使われた森林資源、エネルギーを節約することができます。

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そしてなによりティッシュペーパーにかかっていたお金を節約することができ、お財布も助かるというわけです。
暮らしの中のちょっとした心遣い。
あなたも実践してみませんか?

ゼロ・ウェイストシンポジウム 2005年1月号

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12月4日

お昼過ぎから雨が降り出し、12月にしては少し蒸し暑いような日となりました。アメリカから来日されたセントローレンス大学ポール・コネット化学博士を乗せた車は、勝浦川沿いに上勝町へと走っていました。
途中、「この川の上流に上勝町があります」と説明を受けたコネット博士は、何かをひらめいたかのように顔を高揚させ、次のように話しました。
「川の上流にある上勝町で始まったゼロ・ウェイストの取り組みが、この川を下り、徳島へ、四国へ、そして海へと出て日本全国へと広がっていく。すごくいいアイデアだと思わないかい?」
その後町内の一般の家庭を訪れ、ごみの分別の様子などを見学されました。

12月5日

当日、会場は上勝町から約80名、町外から約50名の参加者で賑わいました。

ゼロ・ウェイストはどうすればできる?

第1部は、コネット博士から「ゼロ・ウェイストで実現する未来」と題してのご講演を頂きました。前半ではアメリカのサンフランシスコ、カナダのノバスコシアでの取り組みを例に、ゼロ・ウェイストをどうすれば実現できるのかについて手振り、身振りを交えてお話されました。
コネット博士は、ご自身の両手を参加者に向けて、「この10本の指がごみを作り出す。そしてこの10本の指がごみを分別するのです。」と分別することの重要性を述べられました。
しかしそれでもリサイクル出来ないものが残ってしまうことについては、「再使用もリサイクルも、堆肥化もできないものはそもそも作るべきではない」として、それに代わるより優れた工業デザインが、そしてごみを生まない設計が必要であると力説されました。

1年ぶりの上勝は…

後半では、前日に上勝町を見てまわられた時の映像を示しながら、1年ぶりに上勝町を訪れての想いを述べられました。町民の方のお宅でのごみ分別の様子をご覧になられ、そのきれいで行き届いた分別に大変感心されたそうです。
また、いらなくなった布団の綿をうちなおし、それにカバーを着せて縫い合わせて座布団を作っている作業場を訪れたときに、作業をしていたシルバー人材センターの会員の方が「ここで作業をしていることがとても幸せです。毎日笑うことが多くて家に帰る時にはおなかが痛くなるくらいです。」とおっしゃられたことにひどく感銘を受け、ゼロ・ウェイストの取り組みが町民の方に良いことをもたらしていると述べられました。
また最後には現在立ち上げ中の特定非営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミーについて触れ、「ここにゼロ・ウェイストについての学校ができた際には、客員教授として何度でも来ます。私の研究仲間も連れてきてもいい」と、協力の意思を強く示されました。

ゼロ・ウェイスト宣言に対する考え方がかわりました。

休憩をはさんでの第2部では、初めに花本産業課長から上勝町へゼロ・ウェイストエネルギーとして期待される木質バイオマスの導入について説明がありました。
続いて、上勝小学校の6年生から「未来世代からのメッセージ」として、ブラジルの地球環境サミットに自費を貯めて参加したセヴァン・スズキ(当時12歳)が子ども代表として行ったスピーチの朗読がありました。朗読の最後には次のように自分たちの想いを述べました。
「このスピーチの内容には、私が思っていたことがいくつもありました。環境がどんどんこわれていること。食事もろくにできない子どもが増えていることも良く知っています。いつか、争いもなく、世界中のみんなが笑っているような平和な世界になるように、私たちはもっと世界について考えなければいけないと思いました。」(武市夏美さん)
「このスピーチを読んで私はゼロ・ウェイスト宣言に対する考え方が変わりました。これまではごみをゼロにするなんて無理なんじゃないかと思っていたけど、これからはもうそうしなければならないんだと思いました。」(金納羽住さん)

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力をあわせて

第3部では「ゼロ・ウェイストで上勝はどう変わるか?」をテーマにディスカッションが行われました。各パネラーからの報告をもとにこれから上勝町でどのようにゼロ・ウェイストを進めていくのかについて、「製品が作られるところへ働きかけることが必要である」「住民の中からも、どんなに小さいことでもアイデアを出していこう」という意見がだされました。

日本で初めてだったことを忘れないために

最後に、コネット博士の来日に貢献されたグリーン・ピースジャパンから「ゼロ・ウェイスト宣言を行った最初の自治体は上勝町だったことを示すために」として贈られた記念の盾が、コネット博士より贈呈されました。