意外に多い 「 甲状腺 ( こうじょうせん ) の病気」 上勝町診療所 木下英孝

公開日 2011年02月24日

甲状腺とは

 

甲状腺は、 頚部 ( けいぶ ) の気管の前にある小さな臓器ですが、とても大切なホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは体内でさまざまな物質の代謝を促進する働きをしており、これがないと人間は生きられないのです。甲状腺の病気を有する人は結構多くて、成人の10%以上に何らかの異常があるといわれています。性別では女性に多く、特に20~30歳代で発症することが多いようです。

 

甲状腺 ( こうじょうせん ) 機能 ( きのう ) 亢進症 ( こうしんしょう )

 

何らかの原因により、甲状腺ホルモンが異常に多く分泌される状態で、症状としては「疲れやすい、体がだるい」「動悸・頻脈」「息切れ」「発汗過多」「手の震え」「体重減少」「イライラ感」などがみられます。代表的な疾患として「バセドウ病」があり、「のどぼとけ」の下が腫れてきます。「心房細動」という不整脈の原因にもなり、心不全になって初めて診断される場合もあります。
治療としては、内服治療、放射線治療、外科治療があります。一般的には内服治療をおこないます。副作用のために薬が飲めない場合などに手術を選択することがあります。

 

甲状腺機能低下症

 

甲状腺ホルモンの分泌が不足する状態で、症状としては「体のだるさ」「寒がる」「浮腫(体のむくみ)」「眠気、うつ状態」「体重増加」などがみられます。血液一般検査では、「肝機能異常」「高脂血症」を指摘されることもあります。また、若い女性で生理不順の原因にもなります。ホルモン剤の内服でしっかり治療すれば、副作用はほとんど無く、妊娠出産も問題は無いようです。

 

亜急性甲状腺炎 ( あきゅうせいこうじょうせんえん)

 

一時的に甲状腺が炎症を起こし、細胞が壊れ、痛みを伴います。甲状腺機能は亢進しますが、鎮痛剤の服用で経過をみていれば治ります。症状が強い場合はステロイド剤を用います。

 

甲状腺腫瘤 ( こうじょうせんしゅりゅう )

 

甲状腺の腫瘤(しこり)には、良性腫瘍、悪性腫瘍(ガン)、甲状腺のう胞があります。多くは良性腫瘍です。甲状腺のう胞とは、水の袋のようなもので、心配はありません。また、甲状腺の悪性腫瘍(ガン)は、放置しなければ致命的な経過をとることは少ないのが特徴です。ガンにも種類がありますが、甲状腺ガンのほとんどは、悪性にもかかわらず進行がゆっくりで、手術治療で良くなります。しこりを自覚したら放置せず、早めに医療機関を受診してください。また、定期的に甲状腺検診を受けることもお勧めします。

 

早期発見が大切

 

甲状腺の病気は、早期に発見・診断することが大切です。甲状腺機能障害に伴う症状は多彩で、「自律神経失調症」などとして対処され、適切な治療が受けられない場合も少なくないようです。何か当てはまる症状があれば、一度は甲状腺ホルモン検査を受けることをお勧めします。通常の血液検査で調べることができます。かかりつけ医療機関でご相談下さい。